30/d journal

History

ブランド『エクレクティク』の原点。

服飾デザインの勉強をしていた
学生時代、
友人のために一つのイヤリングを
作ったことすべての始まり。
「これが、やりたいこと」
その直感を大切に抱えながら、
何をどうしていくべきか
真摯に向き合い、
就職した一流ブランドで
多くを学ぶ日々をかさねます。
そうしたなかで、
今の『エクレクティク』の原点が
かたちづくられていきました。

眞砂 絵里子(Eriko Masago)

eclectic(エクレクティク)作家 兼 店主。桑沢デザイン研究所で服飾のデザイン、その後、セツモードセミナーでイラストを学ぶ。在学中からアクセサリーの制作販売、卸を行う。
その後、イッセイミヤケへ入社し、2007年に独立。eclecticを立ち上げ、東京 目白にアトリエショップを構える。
創りだすアクセサリーはもちろん、お客さまの好みや要望を引き出す丁寧な接客とコミュニケーション力も大きな魅力

服飾やイラストの勉強を
されていたそうですが、
アクセサリーの制作はいつから?

* 眞砂さんが制作し始めた頃の「初期アクセサリー」

眞砂さん

桑沢でまだ服飾の勉強をしていた時でした。
友人が持っていたヴィンテージのイヤリングがとても素敵だったんですけど、
ある日、片側だけ無くしてしまったと聞いて、私までショックを受けて。
それで、ヴィンテージビーズやパーツ、工具を買ってきて、見よう見まねで
同じようなものを作ってみたんです。

そしたら、たった一つ作っただけで、自分の中ですべて辻褄が合ったというか、腑に落ちて、「あ、これがやりたいことだ」「これでやっていこう」と
思い込んで、そのまま今に至ります。


そこでインスピレーションみたいなものが来たんですね

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眞砂さん

そうなんです。好きなもの、得意なこと、性格、などすべてが一致しているように感じて。
それをきっかけに作り始め、最初は欲しいと興味をもってくれる友人向けに販売し始めたんです。
そしたら友人のひとりが「いいお店があるからここに置いてもらったら」と、あるお店を紹介してくれて、そのお店に卸すことになりました。
でも生計が立てられそうなほどは売れるはずもなくて。
この仕事でやっていくには修行が必要だなと思いましたし、卒業後、まずは自立するためにも就職することにしました。
それで、興味をもっていたブランドの一つ、イッセイミヤケで働くことになりました。

イッセイミヤケで担当した仕事は?

眞砂さん

接客販売です。
漠然と、高校生の頃からアトリエショップのようなかたちで何かをやりたいと思っていましたし、自分の手の届く範囲でやることを考えると、店舗の運営、接客販売の経験が必要だと感じて。
それで、たまたまなんですけど配属されたのがイッセイミヤケの中で ちょっと変わった新しいプロジェクトの店舗でした。
ベースになる服があって、それをどこからでも自由にカットできるという
斬新なもの。
ロールカッター、ハサミを使って、お客さまの目の前で好きな衿ぐりに切ったりだとか、スリットを入れたり丈を調節したりしました。
切ってしまったものを元に戻すことはできないので、かなりプレッシャーもありましたけど、お客さまの好みに合わせて服がどんどん違うかたちに仕上がっていくのは面白かったです。
本来お客さま自身がカットができるものではありましたが、スタッフがカットしてさしあげることも多く、自由な選択肢の中からお客さまのご要望に沿ったものに仕上げるという、緊張感もある仕事でした。

自由にカスタマイズできるというのが、
今のスタイルにつながっているんですね

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眞砂さん

そうですね。今のスタイルはその影響が大きいというか、お店を始めてからお客さまとやりとりをしていくうちに自然とこういうかたちになっていきましたね。
ご要望に応えていくということが私自身心地よかったですし、ひとつひとつ向き合っていくことが私に提供できる価値だと今は思っています。
『エクレクティク』でアクセサリーを選んでかたちにすること自体がお客さまの楽しみになったら、とても嬉しいですね。

他にも何か影響をうけた
経験はありますか?

眞砂さん

そうですね、何もかも、後になってさまざまな経験がありがたいと実感するんですけど、特に印象的なことは、三宅一生さんに直接、作品へのアドバイスをいただいたことでした。
「眞砂さんの作品は小さくってちょこちょこっとしていて、すごくかわいいね。これをもっと集めたような、植物のような...自分の中にあるものを出し切る、
迫力のあるものも作ってみては」
たしか、そんなふうに言ってくださったと思いますが、すごく創作意欲が湧いて、手の込んだものを早速あれこれ作ってみたのを覚えています。
ちょっとしたことのようで、私にとっては転機になるアドバイスでしたね。
そうやって作ったものは、明らかに周りの反応が違ってきましたし、それがお店を出すきっかけなどにもつながっていきました。
日々、時間に余裕がないと、つい手の込んだものは後回しにしがちなんです。
でもこのアドバイスに何度も立ち返っているうちに、今では意識的に創作に没頭し楽しむ時間を作るのが習慣になっています。
そうやって作りだすことが、やっぱりお客さまにも響いているように感じますし、また次を楽しみにしていただけることにつながるんじゃないかなと。
これからもずっと大切にしていきたいアドバイスのひとつです。

ヴィンテージビーズのモデルは、天然石。

天然石を使い始めたきっかけは?

眞砂さん

ブランドとしてスタートするまでに使っていたヴィンテージビーズは商品を作っていくことを考えると、これからどんどん希少になっていくものなので限りがありますし、欠けたり剥がれたり日常使いするにはもろいものも結構あるんです。
それで、いざ自分でお店を開くとなった時に選んだ素材が天然石でした。
天然石を選んだ理由は、ヴィンテージビーズよりバリエーションが豊かで、ワンランク上品なのものを作れるかなとも思ったから。
それと前職の社長から「より上質なものに挑戦してみては」とアドバイスをいただいたから、というのもありました。

ちなみに、私が使っていたヴィンテージビーズは、オートクチュールのドレスなどの装飾に使われていたと聞きました。
石を扱うようになってしばらくしてから気がついたことなのですが、あるとき天然石の展示会で、とても気に入っていたビーズにそっくりな模様の石があって、この石がモデルだったんだって感激したんです。本当にそっくりなのがあって。

ヴィンテージビーズを通して、
もうすでに石の魅力に自然とひきつけられていたのですね

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眞砂さん

そうだと思います。 
で、よくみると、これはエメラルドがモデル?これはムーンストーンの光り方を取り入れたものかも、というふうに、今まで使っていたビーズにもそれぞれお手本にしている天然石があるのが分かったんです。
コスチュームジュエリーとしては当たり前だと思うんですけど、気がついたときは、なんだかすごく嬉しかったですね。

つきないインスピレーションから、
本当に素敵なもの、綺麗なものに絞り込む。

アクセサリーをつけ慣れたり見慣れていないと、
眞砂さんがつけていらっしゃる組み合わせのように、
重ねづけしたり、左右アシンメトリーにつけたりというのは
難しいもの。
以前、お母さまのつけていらしたアクセサリーが
デザインのインスピレーションの一つになっていると伺ったのですが、
お客さまにそういったつけ方を提案できるのも、
お母さまの影響もあったのでしょうか?

眞砂さん

母がアクセサリーをつけている姿には憧れてはいたのですが、実はアクセサリーを作り始めた当初、私自身はどちらかというと作るのが好きでつけるのは恥ずかしいというか。つけて喜ぶというよりは作って喜ぶほうでした。
でも、それを販売するという立場になった時、自分がつけてお見せすることが必要だと感じて、色々な組み合わせを試しています。
前職では身につけた服を見ていただくのは当たり前のことだったので、そこで培った感覚ですね。
もともとアクセサリーをつけることが得意でなかったからなのか、自然とアクセサリーを普段つけない方もつけられるような、線が細かったり、ちょっとイビツで素朴だったりする、日常になじみやすいデザインにもなっていて、そこが重ねづけをしやすかったり、アレンジのしやすさにもつながっているように思います。

お話ししながら作るので、自分だけのパーソナルで近いものに
感じられるというのもあるかもしれないですね

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眞砂さん

それもあると思います。
「こういう風につけたい」というイメージから一緒に作っていくことも多いので、そのなかでこんなふうにアレンジできます、という提案もしながらすすめていきます。
シンプルにつけたいときはこう、ちょっと華やかにしたい時はこのパーツをプラスして、などお話をしながらお客さまのなかにアレンジする楽しさの種を蒔いているのかもしれません。
実際、私が思いつかないようなアレンジをしている方や、このピアスにこれを足したらどうかしら、などその人流の楽しみかたを始める方も多くて。私の手から離れてお客さま色に染められているアクセサリーたちを見せてもらえることは、楽しみにしていることの一つですね。
そう考えてみると、お客さまからヒントをいただいて、それを私自身が試して、またお客さまにお伝えして、という循環ができているのだと思います。
お店を独りでやっているようで、実はお客さまがご一緒に作り上げてくださってるんですよね。

普段、天然石の仕入れに行かれたり、
アクセサリーをかたちづくられているなかで、
スランプだったりインスピレーションが
枯渇することもあると思うのですが。
そういう時は・・・あまりない?

眞砂さん

そうですね。私の場合はやりたいことや作ってみたいものがあり過ぎて、それを実現していくのが追いついていない感じです。
例えば一つアクセサリーを作るにしても、石の数が50種類あったら50種類分の組み合わせがあってその数は無数。


石のかたちも違ったら無限に

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眞砂さん

そうなんです。
思いつくままに作っていたら、いくら時間があっても足りないんです。
無限の選択肢と限りがある時間、そのなかで何を作っていくか、どれが本当に綺麗だな、素敵だなと感じるか、絞り込むのは意外と大変で。
でも、それが『エクレクティクらしさ』になっていくと思うんです。頭で考えすぎず、何を綺麗だと感じるかを、常に大切にしたいと思っています。

eclectic ITEM

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